ぐるっと日本を旅してみた Vol.78
「高天原」とか「天孫降臨」とか。
古事記や日本書紀を読んでおけば良かったと思ってしまうような神社や土地を回っていく。
九州、特にこれから進んで行く宮崎県周辺は特にそのような場所が次から次へと現れる。
意味は分からなくても、ありがたく回ってみることにする。
赤い大きな鳥居が立っていた。
霧島神宮の一の鳥居だ。
道路はその下を潜ってまっすぐ伸びている。
鳥居の脇に観光案内所があったので寄ってみることにした。
霧島周辺の観光案内パンフレットがあり、チラチラ眺めてみる。
温泉のキャラクターなのか温泉むすめ霧島黒恵という等身大の看板がありミィが写真を撮っていた。
サイクリストが多いようで自転車関連のパンフレットや案内も多いようだ。
鳥居をくぐり霧島神宮の駐車場へ車を停めた。
駐車場はそこそこ埋まっていて、大勢の人が来ていることを感じさせる。
駐車場脇に池があるがどうやら温泉が沸いているようで温かい。
霧島神宮の境内は、結構広い。
駐車場から参道を進むと道は直角に右へ曲がりその先に神宮の本殿が見えてきた。
「真ん中を歩いちゃダメだよ。 神様の道だから」
うっかりと広い参道の真ん中を歩いてしまいそうになるが、ミィが注意してくる。
参拝をし、御神木や神楽殿を見ている時だった。
大勢の人が参道を歩いてくるのが見えた。
そういえば車を駐車場に停めた時、大型バスが何台か到着していたなぁ。
海外からの観光客の団体だった。
あっという間に参道に行列ができ、その列は長い参道の先まで伸びていた。
「早くお参りできて良かったね」
僕らはちょっとほっとしていた。
人混みを避けて、拝殿の左手奥にある山神社へ行ってみることにした。
山神社への道は、文字通り木々の間を進む山道で「高千穂嶽道」と呼ばれている。
シーンと静まり返り、参拝へ向かう人の足音と、話し声しかしなかった。
山神社は、御主神を瓊瓊杵尊とし、そのお后、木花咲耶姫を相殿神として祀っている。
木々の中にある神社は、鳥居と石祠があるだけのシンプルな神社だった。
その分、何か独特な雰囲気があった。
山神社から下ってくると亀坂という坂道がある。
その石段を降りて行くと亀石という石があるらしい。
僕らは石段を降り始めた。
しばらく歩くとすれ違った人が「もうすぐですよ」と声をかけてくれた。
この人も亀石を見に行ったのだろう。
「ありがとうございます」と会釈し、しばらく降りると「亀石」と書かれた看板とその石が石段の脇にあった。
思いの外大きな石で、亀が頭と4つの足を広げているように見える。
伝説では、神様との約束を破ったために石にされた亀。
薄暗い杉木立の間で、足を踏ん張っているこの亀は、どこへ行こうとしていたのだろうか?
今だに神様から許されていないのだろうか?
どんな約束を破ったのだろう?
石になった亀は、何も答えてくれなかった。
霧島神宮は、元々霧島山の高千穂峰にあったのだが、霧島山の噴火により焼失したり、再建後も火災により焼失したとのこと。
そのため現在の場所に鎮座している。
初期の霧島神宮の跡地が霧島神宮古都址として残っている。
そして、この高千穂峰が天孫降臨で瓊瓊杵尊が高天原から降り立った地とされている。
宮崎県の高千穂もその地とされていて、意見が分かれているそうだ。
霧島神宮から車で15分ほど山を登ると高千穂河原に到着する。
ビジターセンター脇の駐車場に車を停めて、広い登山道のような参道を歩いていく。
やがて「天孫降臨神籬斎場」と書いてある場所に出る。
周囲に拝殿のような建物はまったく無く、高千穂峰をバックにして鳥居がポツンと立っている。
階段を上がり、鳥居をくぐると祭壇のような場所があり、何か特別な場所という雰囲気がある。
「霧島の山の上に天の逆鉾があるらしいよ」
とミィが言う。
高千穂峰の頂上に逆さに刺さっている鉾があると言う。
いつ、誰が、何の為に挿したのかは分からない。
エクスカリバーのように抜けないわけでは無く、坂本龍馬も抜いたことがあると言われている。
今はレプリカらしい鉾。
「行ってみる?」
「行かないよ!」
参道の一部が登山道となっているらしく、しっかり装備をした登山者とすれ違った。
それに比べるとサンダルにTシャツ、ジーンズの僕らは山に入る資格が無さそうだ。
神様に挨拶をすると山を下りることにした。
ビジターセンターまで戻ってきた。
ビジターセンターの前の広場で登山者がクッカーでラーメンを作って食べていた。
「おなかすいたなぁ」
「お昼食べに行こう」
僕らは天孫降臨の地から、地上界へ戻って行った。
鹿児島県に入ってから気になっていたのが「そうめん流し」だ。
所によっては市営のそうめん流し場があるくらいだから食べてみたいと思った。
しかし、ここまでそうめん流しを体験することができなかった。
霧島神宮から降りてきて宮崎県へ入ったところで「そうめん流し」と大きく書かれた看板を見つけたので、寄ることに。
僕らは「食事処 流水苑」さんというお蕎麦屋さんの暖簾をくぐった。
ところが時期的なものかもしれないが
「今、やってないんです」と、店員さんに言われてしまった。
結局「そうめん流し」を食べることはできなかった。
ちょっとガッカリしたが、お蕎麦を頂くことにした。
ざる蕎麦
肉うどん
それに、
ヤマメの塩焼き
を注文した。
出雲蕎麦以来だろうか、蕎麦を久しぶりにすする。
そばの香りと山葵の香りがツーンと鼻を抜ける。
「美味しい」
ヤマメも大きくて、身がしっかりしていて美味しかった!
ごちそうさまでした。
霧島神宮からどこへ向かおうかと地図を眺めていると「霧島」と付いた神社がいくつか見つかった。
霧島山を信仰の対象とする山岳信仰の神社が6ヶ所あり、霧島六社権現と言われている。
その一つ、「東霧島神社」へ行って見ることにした。
東霧島と書いて「つまきりしまじんじゃ」と読む。
霧島神宮から30分ほど山を下ってくた。
JRの線路沿いの駐車場に車を停めて境内に入っていく。
ノーチェックで来てみたのだが、境内には神石、大杉と見所があった。
その中でも一番の見所が「鬼磐階段」。
昔昔、鬼が娘を嫁にしようとしたが、霧島の神様が
「一晩で神殿に通じる階段、千段を石で積み上げたら嫁にしても良い」と約束した。
鬼はものすごいスピードで夜明け前に千段を積み上げそうなほどの勢いだった。
積み上がる前に神様が空を明るくし、鬼に石を積み上げる前に夜が明けたと思わせて、鬼を追い払ったという伝説があるそうだ。
その石段。
結構な急坂を雑に石を積み上げて階段にしているという感じで、ちょっとしんどい坂道でした。
鬼磐階段を上ったところに本殿があり手を合わせる。
帰りは車も走る舗装道路を降りることにしました。
東霧島神社は、霧島神宮に通じる厳かな雰囲気がありつつ、龍や鬼のモニュメントが立っていたり、「鬼磐階段」などの見所のある不思議な神社でした。
「じゃ、行ってくるね」
ミィは、ぽけふたを探しに行った。
僕は、都城市立図書館の立体駐車場で今夜の宿を探していた。
どうにかキャンプ場の予約をするとミィを待っていたが、トイレにも行きたいし、駐車券を持って行けば無料になるらしいので図書館へ行く事にした。
ミィも図書館にいるらしい。
中に入ると近代的な図書館で中央が大きな吹き抜けになっていて、デザインされた階段が中心にあった。
2階は吹き抜けに沿って通路があり書棚も並んでいるのが見える。
キレイな図書館だなぁと思ったら、以前あったショッピングモールを改装して図書館にしたとのこと。
駐車場も立体駐車場で、公営の図書館らしくないなぁと思ったらそういう事だったのか。
カフェショップもあるらしく、この建物は Mallmall(まるまる)と呼ばれている。
ショッピングモール(Mall) から命名したらしい。
キレイでオシャレな図書館でした。
しっかり、駐車場の無料券をもらってから、出発することにします。
図書館を出ると空模様が怪しくなってきていた。
夕飯の食材を買おうとスーパーへ寄る頃には雨が降り始めてきたのだった。
スーパーで買い物を終えて車に戻り出発する時にはものすごい豪雨になっていた。
雷が鳴り響き、ワイパーが間に合わないほどの雨が吹き付けてくる。
道路はところどころ水没し、川のようになっている。
その中を恐る恐る、水しぶきを上げながら進んで行く。
「なに、この雨!」
ついさっきまで太陽が出ていて、暑さを感じるほどだったのに。
しばらく雨は止みそうに無い。
この雨が続いたら今夜のキャンプはどうなるんだ?
今後の天気を心配しながら、僕は、山の中へと車を進めた。
薄暗い雨の山道を走り、蜂の巣公園キャンプ場に着いた頃には雨が小降りになっていた。
チェックインをすると「すごい雨でしたね」と言われた。
「都城から来たんですが、向こうはものすごい雨だったんです。」
「こちらもさっきまでひどい雨が降ってましたよ」
最初、フリーサイトを予約したのだが僕らしかいないということ、また豪雨になったら車に逃げ込めるようオートサイトに変更してもらった。
蜂の巣公園は、川が Ω のようになった所にあった。
「蜂の巣」という名前に惹かれてキャンプ場を予約していた。
蜂の巣だらけで、蜂がブンブン飛んでいるわけでもなく。
養蜂家の家の庭にテントを立てるわけでもない。
川沿いの岩に無数の穴が開いている為に「蜂の巣」という名前が付いているそうだ。
・・・その肝心の蜂の巣を見ることは無かったのが、残念。
テントサイトは、Ωの内側の川沿いに並んでいた。
恐らく、公園の一部をキャンプブームに合わせて作られたサイトのようだった。
遊歩道のようなところを乗り入れて車を進めるとオートサイトがあった。
テントを設営すると近くの温泉へ向かった。
小高い山の上にあるリゾートホテルの日帰り入浴はとても気持ちよかった。
キャンプ場に戻ると、管理人さんはすでに帰った後だった。
シーンと静まりかえったキャンプ場。
僕ら2人だけの贅沢な空間。
雨さえ降らなければ、気持ちの良い夜を過ごせそうだ。
2023/09/10(土)
天候:晴れのち雨 最低 21.5℃/最高 31.2℃
鹿児島県霧島市〜宮崎県日南市
走行距離:123.0km
総走行距離:10425.8km
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