ぐるっと日本を旅してみた Vol.94
紀伊半島は、思った以上に大きかった。
和歌山から2日かけてようやくその先端に着いた。
今日は、もう1日かけて半島を走り抜けていこうと思う。
結局、3日かかることになる。
目の前に岩が点々と立っている。
写真なんかで見たことのある光景だ。
「これが橋杭岩か」
確かに岩の上に長い板を置けば橋に見えなくもない。
橋杭岩は、キャンプ場から 15分ほどのところにあった。
道の駅 くしもと橋杭岩となっていて朝早くから観光客が来ていた。
海岸の堤防沿いに駐車場がありその目の前、海岸線に沿って橋杭岩が並んでいた。
その昔、弘法太子が鬼と朝までに沖にある島へ橋をかける賭けをしたという。
次々と橋杭を立てていき完成が近づくと、鬼が鶏の鳴き真似をして邪魔をした。
朝が来たと勘違いした弘法太子は、橋をかける事を諦めてその場を去った為、橋杭だけが残ったと言う伝説がある。
似たような話を宮崎県や他の場所でも聞いた。
ある時は、神や人間が鶏の鳴き真似をして鬼を邪魔すると言うもの。
人間側が邪魔をされると言うのは、ちょっと珍しいかもしれない。
道の駅の中を見てみる。
地元の特産物が並んでいる中に「じゃばら ウォーター」と「有田みかんのスムージー」を買ってみた。
有田みかんは、分かるんだが、じゃばらって何?
どうやらゆずや九年母(くねんぼ)という柑橘類の自然交雑種でできた植物の実らしい。
初めて飲んだ じゃばら は、ちょっと酸味があってスッキリして美味しかった。
和歌山県太地町は、捕鯨が盛んな土地だ。
太地町に入ると、鯨料理看板や、鯨のモニュメントなどが目につくようになる。
その太地町の岬の先端に「太地町立くじらの博物館」があった。
まさに太地町の鯨との関わり合い、その歴史を紹介する博物館だ。
中に入ると巨大な鯨が宙を舞い、鯨に関する様々な展示がある。
2階に上がると捕鯨の歴史、昔の鯨漁のやり方の説明がある。
現代は、捕鯨船を使い、丈夫なモリを打ち込んで引き上げるのだが、
昔は、大勢の人が人力で鯨を取っていたようだ。
想像するだけでも凄そうだ。
一旦外へ出て、奥へ進むと入江があり養殖筏のような通路が海の上に作られている。
時折その筏の脇で「ブフォ!」と言う音がして鯨かイルカが水飛沫をあげているのが見えた。
生簀になっているのだ。
身体の大きな鯨の生簀は、その規模も大きく、入江が大きな生簀になっているようだ。
スケールの違いに驚いてしまう。
入江に沿って奥へ進むと海洋水族館マリナリュウムがある。
ここまでは、博物館ということで資料や標本しか見ていなかったが、マリナリュウムでは実際の魚を見ることができる水族館になっているようだ。
中に入るとさほど大きな水族館ではないが、イルカが水槽を泳ぎ回り、クラゲが水中を漂うのを見たり、様々な魚たちを目にすることができる。
ここだけでも十分楽しめる。
ミィは、夢中になって魚たちを見ていた。
クジラショーの時間になった。
入江に設置された見学席へ行ってベンチに座る。
飼育員の指示に従って泳ぎ回ったり、飛び跳ねたり。
小型のクジラとはいえ、その迫力はすごい。
イルカショーは何度も見たことがあるが、そのスケールが全然違う。
僕らは、クジラショーを圧倒されながら楽しんだ。
せっかくここまで来たのだ、鯨を食べてみたかった。
くじらの博物館から国道へ戻ったところにある「道の駅たいじ」に寄ってお昼を食べる事にした。
道の駅たいじは、小さな道の駅でお土産を売っているショップと、レストランがある。
鯨の刺身、鯨の竜田揚げ、鯨カツ、鯨の焼肉、イルカのすき焼きなどの他、マグロなど海産物のメニューが並ぶ。
ここは、鯨だ。
鯨焼肉定食と、鯨スタミナ丼を頼んでみた。
子供の頃、鯨はよく食べていたが最近はほとんど口にしていない。
ミィは、ほぼ食べた事ないんじゃないだろうか?
鯨肉は、臭みもなく食べやすかった。
鯨焼肉を食べているミィも「美味しい。美味しい。」と、箸が進むようだ。
久しぶりに美味しい鯨料理をいただいた。
ごちそうさまでした。
不意に正面の車窓に滝が見えた。
「那智の滝だ!」
華厳の滝、袋田の滝、そしてこの那智の滝を日本三名瀑と呼ぶそうだ。
1段の滝としては日本一の落差 133m となっている。
山間の奥に見えた滝は、思った以上に大きそうだった。
坂道の途中にある土産物店の脇の駐車場に車を停めた。
「そこを降りていくと滝だよ。 熊野那智大社は坂を登った方だから」
駐車料金を収集にきたおじさんが教えてくれる。
僕らは、坂道を降りていった。
熊野那智大社の社殿の隣に滝がある物だと思っていたのだがちょっと離れているようだ。
滝があるのは、広大な境内の飛瀧(ひろう)神社の方だった。
まず飛瀧神社へ参拝に行く。
神社の目の前に大きな滝が轟々と流れ落ちている。
これが那智の滝だ。
しばらく滝を見ていたが、更に滝の間近、「拝所」と呼ばれる場所まで行けることがわかった。
参入料を払い、石段を登っていく。
延命水という長寿になれる水を口にすると、目の前が配所だった。
狭い階段を譲り合いながら登って拝所に着いた。
滝にさらに近づき迫力のある様子を目に焼き付ける。
「すごいね!」
凛とした空気の中、轟々と流れ落ちる滝がとても厳かに見える。
この滝が御神体そのものなのだ。
神様と対峙している。
そんな場所だった。
駐車場から今度は滝と反対方向へ坂道を登っていく。
道路沿いに土産物屋が何軒か現れて、そこから右に入っていく階段がある。
そこが熊野那智大社の表参道だった。
長い階段は途中で横道があり、また上へ上がるようにジグザグしていた。
その階段を登っていくと途中何かの跡地のような平らな一角があった。
「あっ、鹿がいる!」
4、5頭の鹿が草を食べている。
参道を歩いていた人が皆、写真を撮り始めた。
僕らもそれに混じってカメラを向けた。
「奈良から来たのかな?」
最初、何の事かわからなかったが考えてみれば、背景の山を越えるともう奈良県なのだ。
ただ、奈良公園からここまで来るのは熊野古道を超えて来なければならないのだけど。
階段を登ったところに本殿がある。
本殿の前には、熊野の神の使い八咫烏が目を光らせている。
僕等は、礼殿に手を合わせた。
境内は、厳かな雰囲気がある。
そこから少し横にそれると三重塔があり、その後ろに那智の滝が見えた。
この風景を見ているとこの山一帯が信仰の対象だったことがわかる。
参拝を終えて、僕等は階段を降り始めた。
鹿はまだそこにいた。
はるか昔からそこにいたかのように。
草を食べ続けていた。
那智から降りてきて、那智勝浦の町中で国道42号線へ入った。
国道を走ると間もなく三重県に入った。
途中、道の駅で休憩をとりつつ、僕は走り続けた。
今日は、三重県の伊勢市を目指していた。
お伊勢参りに行くのだ。
国道は、海岸線を走っていたのだが、いつの間にか山間を走っていた。
この辺りはリアス式海岸で海岸線が入り組んでいるので風景がコロコロ変わっているのだ。
やがて日が暮れて薄暗くなってきた。
紀北町の道の駅 紀伊長島マンボウに着く頃には、すっかり暗くなり道の駅の営業も終わっていた。
ここから国道42号線は内陸方向へ向かうのだが、Google Map は、さらに海岸線を進む国道260号線を示していた。
道幅が狭くなり、急カーブも多くなってきた。
しかも、日が暮れて暗い山道。
僕は慎重にハンドルを握った。
道はさらに国道を離れ、山の中へ入っていく。
ほんとにこの先に伊勢市があるのか?
そんな不安に襲われた頃、遠くに街の灯りが見えてきた。
あれが伊勢市だ。
僕はちょっとホッとした。
午後8時。
那智の滝から約4時間、伊勢市に着いた。
ホテルの周辺に食事のできるところが無さそうなので今夜はコンビニ飯だ。
伊勢路を走りきった僕は、ホテルの外で食事をする気にはならなかった。
今夜は、ゆっくり休んで明日は伊勢参りに行くことにしよう。
2023/09/26(火)
天候:晴れのち曇り 最低 22.6℃/最高29.1 ℃
和歌山県東牟婁郡串本町〜三重県伊勢市
走行距離:219.0km
総走行距離:12894.8km









































































































































































































































































































































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