ぐるっと日本を旅してみた Vol.72
車のメーターが新潟を出発してから 10,000kmを超えた。
ゴールはまだ見えない。
南の折り返し地点、沖縄県にもまだたどり着いていない。
それどころか、沖縄へ行く方法もまだ決まっていなかった。
まずは、本土最南端の佐多岬を目指す。
そして、沖縄へ渡る方法をそろそろ決める。
それが今日の目標となる。
知覧という地名は、耳にしたことがあった。
太平洋戦争時に特攻隊が出発した地だ。
道端に「旧陸軍特攻基地 『戦闘指揮所跡』」と書かれた石碑があった。
小高い山に囲まれていはいるが、ここだけ平らな土地が広がっている。
ここから特攻隊が飛び立ったのだろう。
飛行場として利用するにはちょうど良かったのかもしれない。
今となってはその名残は見当たらないが、
ここから多数の零戦が飛び立っていったのかと、
いくつもの命を落として行われた特攻攻撃が行われたのかと。
僕の目の前にある知覧の地は、暖かな陽射しと、爽やかな風が吹いている、静かな場所だった。
ポッカから出ている「鹿児島知覧紅茶無糖」というペットボトル飲料がある。
この紅茶が好きで、スーパーなんかで見つけると買ったりしていた。
その知覧に来ていた。
特攻隊の発信地としての知覧だが、お茶の産地でもある。
僕らは、茶畑の真ん中にいた。
その向こうには三角錐のような開聞岳が見える。
あたり一面の緑の茶畑。
背の低い、緑の葉っぱを茂らせ、丸みを帯びたお茶の木と、
所々柱が立っていて、その上で回っている扇風機のような羽根。
静岡あたりで見かける光景が、ここでも見る事ができた。
「すごい!すごい!知覧茶だ!」
僕は、ちょっと興奮していた。
昨夜、スーパーA・Z で買った、ポッカの知覧紅茶を飲みながら、知覧の茶畑を眺めていた。
「イッシーを探しに行こう」
と、僕が言う。
「イッシーって、何?」
と、ミィが言う。
ネス湖のネッシーを模倣して日本のあちこちに現れた未確認生物。
有名なのは、屈斜路湖のクッシーと池田湖のイッシーだ。
・・・とはいえ、僕が子供の頃の話。 ミィが知る由もない。
池田湖には、イッシー君の看板や、イッシーの絵が書いてあったりして、イッシーブームの痕跡はあった。
だた今では池田湖を中心にした観光地という感じでそれほどイッシーを推していたりはしない。
池田湖自体はそこそこ広いのだが、思ったほど広くは感じなかった。
まぁ、ここに巨大生物がいればすぐに分かるだろうと、思えるほどの広さだ。
屋根がスロープになった建物があり、上が展望台になっているので上がって湖を見渡してみた。
風が吹いて、湖面にさざなみが起きていたが、イッシーがその首を水面に表すことはなかった。
JR指宿駅の裏の駐車場に車を停めた。
駅周辺にぽけフタがいくつかあるらしい。
「行ってくるね」
ミィは喜んでぽけフタ探しにいった。
僕は車に残り、この後の行程考えていた。
福岡で後回しにした沖縄行きが決まらない。
どうやって行くか悩んでいると友人が Facebook でコメントしてきた。
「沖縄は、フェリーで行くの?」
彼は、沖縄まで車で行くと思っていたらしい。
ただ、飛行機を考えていた僕にフェリーという別の方法を考える機会を与えてくれた気がした。
マルエーフェリーが、毎日鹿児島と那覇を結んでいる。
鹿児島を18時に出港し、翌日19時に那覇に着く。
25時間の船旅だ。
それも面白いと思った。
しかし、ネットで予約をしようとしたと時。
船体整備の為、運休していて乗れないようだった。
更に調べるとマルエーフェリーと交互にマリックスラインという会社がフェリーを運行していた。
こちらは乗れそうだった。
ただ、予約は電話のみ。
早速電話をするとあっけなく予約が取れた。
飛行機も調べるとフェリー代とあまり変わらない値段で鹿児島-那覇間をソラシドエアーが飛んでいた。
こちらも予約が取れた。
これで沖縄行きが決まったのだ。
ミィが満面の笑みを浮かべて戻ってきた。
収穫があったようだ。
「駅前にもあるから、そっちもよろしく。」
仰せの通り、僕は車を駅前に向けて走らせた。
薩摩半島の指宿から大隅半島へ渡る。
本土最南端のフェリー、なんきゅうフェリーに乗る為に指宿港へ向かっていた。
しかし、道路標識や、地図の示す方向を見て何かおかしい感じがした。
よく見ると、なんきゅうフェリーは指宿港ではなく、ちょっと離れた山川港から出港するようだった。
完全に勘違いしていたのだ!
あわてて車の向きを変える。
「間違えたの?」
ミィが呑気に聞いてくる。
「別の港だったよ。」
余裕をもって来たはずが、これだ。
1日何便も出ていないので午前の便に乗りたかった。
山川港まで15分位か。
間に合いそうだけど、ちょっと焦っている自分がいた。
僕は、慎重に車を進めた。
乗り場を間違えたのだが、港に着くとフェリーはまだ到着していなかった。
バスの営業所の待合室のような所の窓口で乗船手続きをする。
なんとものんびりした雰囲気だった。
やがて、到着したフェリーは、ここまで乗ったフェリーの中では一番小さいかもしれない。
車に戻り、誘導に従ってフェリーに乗り込む。
天気も良いので眺めの良いデッキを陣取る事にした。
フェリーは、出航すると穏やかな水面を進んでいく。
後方に開聞岳が良く見える。
薩摩半島先端のランドマーク的ポジションだ。
正面に目をやると大隅半島の山々が見える。
1時間ほどで根占港に着いた。
こちらもバスの待合所のような小さなターミナルだった。
山川港と同じく人気も少なく、のんびりとした雰囲気の港だなと思った。
僕らはこうして、本土最南端の地に足を踏み入れたのだ。
フェリーで大隅半島の根占港に着いてまずは、お昼。
港の近くで探して、きよか食堂さんへ行くことにした。
カウンターとテーブル、小上がりがある。
10人も入ればいっぱいになりそうな家族経営のお店だ。
「今日はラーメンにしようかな」
近所の家族連れがやって来て、僕らをちらっと見ると、
当たり前のように席に座り、当たり前のようにラーメンを啜っている。
そんな日常からすると、僕らは異邦人なのかもしれない。
メニューは実にシンプルだった。
僕は、チャンポン。
ミィは、ラーメンを注文した。
長崎を過ぎてから結構チャンポンを食べるようになった。
ラーメンとは違う美味しさがある。
きよか食堂のチャンポンは豚骨が効いていて具だくさん。
ラーメンは、豚骨ベースの塩ラーメンに近い感じだけど醤油の香りもする食べたことない味だった。
これはこれで美味しいのだ。
チャンポンもラーメンも美味しかった!
ごちそうさまでした。
15分くらい先に観光スポットになっている滝があるらしい。
早速、行ってみる事にした。
町を離れ山の中を進んで行くと、道路の脇に駐車スペースがあった。
それが「雄川の滝」の展望所へ行くための駐車場らしい。
駐車場の脇から階段が続いている。
そこからずいぶん降りていくようだった。
木々に囲まれた階段を降りていくと急に視界が開けて木製の展望所に出る。
落差46mの「雄川の滝」より少し高い位置にある。
平らな大地の川の部分だけ何かで削ったかのような両側が切り立った渓谷だった。
水が澱みそうな平面を川が流れていて、その先が突然スパッと切り取られたような崖になっていた。
そこを水が流れ落ちている。
幅は60m。
その中央に白く一筋の滝が流れ落ちている。
渓谷沿いにも遊歩道があり滝を下からも見る事ができるようだった。
ただし、その入り口はこことは別の場所で、僕らがいる展望所から下に降りることはできなかった。
滝の両側にもいく筋かの流れがあって幅の広い滝を形成しているようだ。
下からみると白糸の滝のようだと言うから見に行けば良かったかな?
滝の対岸に何か建物が見えた。
滝があまりにも綺麗に垂直に切り立っているので、一見するとダムでもあるかのようだった。
実は、滝の上部は実際に小さなダムになっていて発電用の取水口がある。
対岸の建物はその発電所だった。
もしも、ダムが無かった頃は、もっと豪快に流れる滝だったのかもしれない。
水量のほとんどを発電用に使われるため細々とした滝になっているが、それでもその景観は美しかった。
「何あれ?」
神社の前を通った時に見えた光景が不思議な光景だった。
もう一度、その光景を確かめたかったので、雄川の滝へ行った帰りにその神社へ行くことにした。
南大隈町にある諏訪神社は、見た目が不思議な神社だ。
小さな神社で、鳥居があり左に手水舎、右に社務所があり奥に拝殿が見える。
よくある町の総鎮守といった感じなのだが。
「なんで鳥居が2つ?」
鳥居が2つ並んで立っている。
こんなのは見た事がない。
長野の諏訪神社に上社、下社があるが、それを表現しているとも言われているらしいが、鳥居が2つある理由は他にも諸説あるらしい。
左の鳥居から入り、右の鳥居から出るのが参拝の作法だとか。
僕らも作法に従い左の鳥居で一礼すると境内に足を踏み入れた。
拝殿で参拝をしてしばらく社殿の造りを眺めていたが、今度は向かって左の鳥居から出る事にする。
世の中にはいろんな神社があるなぁ。と改めて思った。
「本土最南端佐多岬」
と、書かれたゲートをくぐって最南端への道を進む。
道路の周りにソテツやシュロの木が増えてきて南国感が出てきた。
カーブの先端が駐車帯になっていて
「北緯31度線」の文字が見える。
さらに進むと道路が行き止まりになっている所に駐車場があった。
ここが本土最南端佐多岬だ。
駐車場から先にトンネルがあり遊歩道が続いていて更に岬の先端にある佐多岬灯台まで行けるようになっていた。
しかし、現在は災害復旧の工事を行なっていて入る事ができなかった。
この駐車場が実質最南端だった。
大きなガジュマルの木が立っていて撮影スポットになっている。
その横が木製のテラスになっていて東シナ海を望む展望台になっていた。
岬の先端に佐多岬灯台が見えた。
ついに来た!
もちろんこの先には沖縄県があり、国土の最南端はさらに先の沖縄県波照間島にある。
流石にそこまで行くことはできない。
この旅では車でたどり着く事ができるこの佐多岬が最南端という事になる。
「遊歩道行ってみたかったね」
災害復旧とは、おそらく7月の台風や大雨の影響だろう。
雨の中を走っていた山陽地方を懐かしく思い出した。
駐車場脇の観光案内所を覗いて見る。
ちょっとした記念品やお土産を売っている。
僕らは、「日本本土4極 最南端到達証明」を手に入れた。
これで「日本本土四極踏破証明書」が完成する。
新潟を出発してから 72日目の事だった。
後は、本州最南端を目指し、残り 20都県を回る旅となる。
まだまだ旅は続くのだ。
その小さなキャンプ場はとてもキレイなキャンプ場だった。
佐多岬へ続く南大隈町道佐多岬公園線の入口にある佐多岬野営場を今夜の宿とした。
周囲に3箇所ある無料キャンプ場のうちの1ヶ所だ。
トイレは水洗、炊事場は良く整備されていてキレイ、そしてサイトはキレイな芝生が敷かれている。
四角形のキャンプ場は入口の脇にトイレがあり、場内は円形の通路がある。
通路の内側の真ん中に木が立っているがその周りは広い芝生のサイトになっている。
外側は、柵があるのだが柵と通路の間が芝生になっていてそこにもテントを設営できる。
僕らは、外側の区画にテントを設営した。
近くにホテルがあるようなのでお風呂に入ろうといってみたが、どうも閉館しているようだった。
そのホテルの先にも無料キャンプ場にも海岸沿いに無料キャンプ場があるのだが、ちょっと荒れている感じで佐多岬野営場にして良かった、と思った。
キャンプ場に戻ると、サイクリストが1人中央の木下にテントを立てていた。
今夜は、彼と僕らだけのキャンプ場だ。
すぐ隣に民家があるのでちょっと気を使うが、民家側からは離れた場所に設営したので大丈夫かな?
キレイなキャンプ場で過ごす夜はとても気持ちが良い。
僕らは、本土最南端のキャンプ場でとても静かな夜を過ごす事ができた。
2023/09/04(月)
天候:晴れ 最低 23.8℃/最高 34.8℃
鹿児島県南九州市〜鹿児島県肝属郡南大隅町
走行距離:128.4kmkm
総走行距離:10129.2km
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