ぐるっと日本を旅してみた Vol.51(番外編・クレームでは無いよ)
この旅も50日を過ぎた。
長旅ならトラブルも1つや2つ合っても不思議では無い。
キャンプ場がいっぱいで泊まれなかったり。
行った先が休みだったり。
大雨に降られたり。
現に台風の為に予定を変更して旅を続けている
そうは言っても僕らの旅は順調に進んでいた。
しかしこの日だけは別だった。
トラブルをまとめてここに持ってきたんじゃ無いだろうか?
そんな事を思ってしまう日だった。
岡山での宿泊は、市内の老舗っぽいホテルに泊まることにした。
片側2車線の大通りに面したホテルだった。
ホテルの駐車場を確認する為にフロントへ行きたかったのだが、ホテルの前に車寄せが無く歩道があるだけ。
結局、路上駐車でフロントへ向かった。
フロントで駐車場を確認すると隣に立体駐車場があるとのこと。
ホテルに向かって左にあるのです。
「大通をバックはできませんので次の交差点で左折して回ってきてください。
係員が今行きますので。」
大通ではあるが車の通りが少なかったので問題は無かった。
僕は、ホテルを一周するように小路を回って駐車場に車を入れた。
「ありがとうございました。
お疲れさまでございます。」
フロントの女性は、カーリングの藤澤五月さんに似た感じで、丁寧に対応してくれた。
部屋はエレベーターを降りたすぐ右の角部屋だった。
カードキーではなく金属の鍵なのだが、鍵穴に差し込んで回そうとしても回らない。
ガチャガチャと揺すったり、押したり引いたりしたが回らない。
廊下に内線電話があったのでフロントに電話をした。
「鍵が開かないんですけど。」
「少々お待ちください。今参ります」
程なく藤澤さん(仮)がやってきて鍵をガチャガチャとするがやはり開かない。
しばらくして、カチャッと扉が開いた。
「申し訳ありません。ちょっと持ち上げる様にして開けてください。」
藤澤さん(仮)が申し訳なさそうに言った。
僕らはお礼を言って中に入り荷物を置いた。
角部屋で広い室内は正面窓と右の壁が直角で左側の壁が斜めになった変則的な形をしていた。
その分随分と広い部屋だった。
斜めの部分にユニットバスがついている。
「あぁ疲れた。」と、TVをつけようとしたら今度はリモコンが反応しない。
再びフロントに電話をすると、申し訳なさそうに藤澤さん(仮)がやってきた。
ボタンを押していたが、
「電池がなくなってますね。
申し訳ありません。
電池を持って参ります。」
と電池をフロントまで取りに行き、交換してくれた。
「わざわざすみません」
僕はお礼を言い、彼女はフロントへ戻って行った。
すると今度は、トイレから悲鳴があがる。
「臭い!臭い!臭い!臭い!!!」
何事かと思ったらユニットバスが臭いのだ。
それもトイレから異臭がする。
良く見ると水洗トイレに溜まっているはずの水が無く、配管から直接トイレのにおいが漂ってくる。
フロントに3度目の電話をする。
藤澤さん(仮)が応対してくれる。
「トイレの水が抜けていて臭いんです。
すみませんが部屋を変えて貰えませんか?」
「もちろんでございます。
大変申し訳ありませんが荷物を持ってフロントまでお出でいただけますか。
お部屋をご用意いたします。」
僕は、クレーマーにでもなったような気になって申し訳なかった。
荷物を持ってフロントへ行くと藤澤さん(仮)が応対してくれる。
「大変申し訳ありませんでした。
お部屋をご用意致しましたのでこちらをお使いください。」
このホテルは藤澤さん(仮)に救われているんじゃ無いだろうか?
応対が素晴らしいと感じた。
新しい部屋は、これも驚くべき部屋だった。
部屋に入ると縦長の良くあるツインの部屋で入口脇がユニットバス。
部屋の右手にカウンターテーブルがあり、ベットが2つ並んでいる。
そしてその隣にも補助ベットが並んでいる。
部屋がベットで埋まっている。
トリプルの部屋だったのだ。
僕らは、ベットで埋まった部屋で一晩を過ごすことになった。
翌朝、朝食を食べに地下にある食堂へ行った。
が、なんだか薄暗く人気がない。
それでもご飯、みそ汁、おかずが置いてあってそれを取ってきて食べるスタイル。
シーンと静まりかえった食堂で2人で「大丈夫だよな?」と確認しあって朝食をとった。
食べ終えて、人気の無い厨房へ「ごちそうさまでした」と、声をかけて食堂を出る。
出たところで入ってきた人とすれ違う。
この人も食堂に入るとビックリした顔をして、それでも食事のあるテーブルに向かって行った。
チェックアウト時にフロントに藤澤さん(仮)はいなかった。
いろいろトラブルはあったし、なんとも不思議なホテルだったけど、彼女に救われた気がする。
藤澤さん(仮)の笑顔が印象に残ったホテルでした。
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